太田通信 2025.6 #2

~5軸複合旋盤導入と独自生産管理システムによる挑戦~
平成24年度補正「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」において、弊社が応募した事業計画「当社独自構築生産管理システムを組み込んだ5軸複合旋盤導入による高品質・複雑な試作部品加工の単品・短納期化実現」が採択されました。この採択は、私たちがこれまで掲げてきた「高付加価値なものづくりの実現」「顧客ニーズに即応する柔軟な体制の構築」といった企業姿勢が認められた結果であると自負しております。
本コラムでは、今回の導入の背景と意義、そして目指すべき技術革新について、詳しくご紹介いたします。
なぜ5軸複合旋盤なのか
近年、製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。製品開発サイクルの短期化、試作品に求められる複雑形状の増加、個別対応への要望など、多品種少量・高精度への要求がかつてないほど高まっています。
従来のNC旋盤やマシニングセンタでは、複雑形状の部品加工において、複数の工程を経る必要があり、段取り替えや再調整による工数増加、寸法ズレのリスク、納期の遅れが課題でした。
これに対して「5軸複合旋盤」は、旋削加工とミーリング加工を一台で完結させることが可能な次世代型の加工機です。複数の角度・方向から同時に加工が可能であり、ワンチャックでの一貫加工により、加工精度と効率が飛躍的に向上します。
つまり、「高精度」「高効率」「多様性対応」という、今まさに求められる製造業のキーワードを、一台で実現する革新的な設備なのです。
独自構築の生産管理システムとの融合
設備の導入だけでは、真に競争力のあるものづくりは実現しません。今回、弊社が掲げたもう一つの柱が「独自構築の生産管理システム」です。
このシステムは、試作・少量生産に特化したフレキシブルな工程管理とトレーサビリティの確保を目的に、当社が独自に設計・開発したものです。受注から設計、加工、検査、納品に至るまでの各工程をリアルタイムで管理・共有し、進捗や納期、品質に関する情報を一元化します。
特に、5軸複合旋盤との連携によって、機械稼働率や加工データ、段取り時間などの詳細なログ情報も収集・分析可能となり、PDCAサイクルの高速化と改善スピードの向上が図れます。
このシステムと新設備の融合によって、単品部品の短納期化が可能になり、特に試作品やカスタム部品の分野で大きなアドバンテージを持つことができました。
試作部品市場への戦略的展開
従来、試作部品市場は大手メーカーの系列企業や熟練工を擁する町工場によって担われてきました。しかし、近年では製品の高機能化・小型化に伴い、より複雑な形状の加工や、より短い開発スケジュールが求められています。
そのような環境下において、弊社は今回の設備導入を「試作部品市場への本格的な参入の第一歩」と捉えています。
・複雑形状にも対応できる加工技術
・高い精度と再現性を両立する一貫生産体制
・納期対応力を担保する生産管理ノウハウ
これらを総合的に備えることにより、航空機部品、医療機器、精密ロボット、EV部品など、高付加価値な産業分野への展開を見据えています。
中小企業が持つべき未来志向
本事業は、単なる設備更新ではありません。私たちが目指すのは、「中小製造業が持つべき未来志向」の実現です。高度な機械を導入するだけでなく、それを最大限に活かすための人材育成、工程設計の見直し、そしてIT活用による情報共有・連携の強化が不可欠です。
さらに、今後はAIやIoTとの連携によるスマートファクトリー化にも視野を広げています。現場とIT、技能とデータ、設備と戦略——それらをつなぎ直すことこそが、これからの「ものづくり」の価値創出の鍵となるのです。
最後に
今回、補助金の採択を受けて導入される5軸複合旋盤と独自生産管理システムは、弊社にとって「製造業の変革の核」となる存在です。これまで培ってきた現場の力と、これから取り組む技術革新との融合によって、お客様にとって「頼れるパートナー」であり続けることを目指してまいります。
私たちは、これからも新しい挑戦を恐れず、変化を機会と捉え、常に一歩先の価値を提供できる企業であり続けたいと考えています。